第18回 香港ビジネス懇話会

『香港1号店から中国全土へ〜熊本発〈味千拉麺〉の挑戦』

開催日:2010年7月6日(火)
所属名:ビジネス交流委員会
場 所:中央区日本橋 HSBC大会議室

日本香港協会では7月6日、改装が済み使用可能となったHSBC新大会議室において久々に第18回香港ビジネス懇話会を開催しました。今回は1968年に熊本市で、わずか7坪8席の「味千ラーメン」の名称で一号店をオープンし、現在では国内で102店舗、海外に489店舗の幅広いチェーン展開している「味千拉麺」チェーン本部 重光産業㈱取締役広報室長 重光悦枝氏をお迎えして、九州の小規模な一店舗からわずか40年余で香港・中国の429店舗を含めた500店舗に達せんとする規模まで育てたフランチャイズ・ビジネスの成功の鍵、失敗から学んだこと、メニュー開発の苦労話、コピー商品への対応、上海万博への出店など具体的な事例を取り上げて分かりやすくお話いただきました。
  
重光悦枝(しげみつ よしえ)氏のプロフィール:熊本市生まれ。大学卒業後、地元ラジオ局のキャスターとして活躍し、その後、ニューヨークの大学にてホテルとレストランのマネージメントを学ぶ。創業者である父の急病により1996年に帰国。
同年重光産業入社。現在、「食を通じてアジアと日本の架け橋となること」を目標に味千拉麺の広告塔として海外を飛び回りながら、味千拉麺のグローバル化に励んでいる。中小企業家同友会西支部所属、熊本託麻倫理法人会副会長、東京和僑会アドバイザー。 

講演内容を要約すると:
1.熊本という地方都市からどのように中国に進出・展開していったか。「からだに良いと思うもの 美味しいと思うもの」をお客様に届けたい。これが味千ラーメンの原点である。味千ラーメンの「味」をより多くの人に食べてもらいたい。その気持ちが海外店舗展開につながった。
  
2.初の海外進出として1996年に台湾、香港に店舗をオープンした。しかし、
現地の製麺店とタイアップした台湾では失敗、閉鎖に追い込まれた(‘07年再開)。
台湾へは最初日本人スタッフを派遣したが、引揚げたとたんに味千オリジナルの味からかけ離れたものになった。現地任せになると、このラーメンはどこのもの?オリジナルからは似ても似つかぬものになってしまう。これが失敗の原因であり、この失敗から多くのことを学んだ。

3.“千味油(タレ)”“厳選された小麦粉のブレンドから生まれた中太ストレート麺”“味千オリジナルのフライドガーリック”など味千ラーメンの基本の材料と味を守ることが重要と認識しており、専門スタッフを日本・現地に配置してきめ細かいフォロー体制を敷いている。

4.一方では、創業者の作った「味」を世界に広め、その味を多くの人に喜んでもらいたいと考えると共に、食文化の違うそれぞれの国の人にどうすれば喜んでもらえるかを考え、現地(各国)の食生活にあったメニュー構成も充実させている。日本のラーメン専門店と異なりラーメン・レストランとして利用されていることから、中国ではトッピングの違いで17種類のラーメンが提供されているのみならず、日式の鰻魚炒飯(うなぎチャーハン・・日本ではまったく受けなかった)などや定食類、おつまみ、パフェ、デザートまでお客様の要望にこたえられる多彩な品揃えがされている[バリエーション]。

5.店舗展開成功の要因の一つに華僑・華人パートナーとの良き出会いが上げられる。2007年に香港株式市場、2009年シンガポール カタリスト市場に上場を果たしている。各地の現地パートナーを信頼し任せるべきことは任せることが重要で、味千拉麺国際会議を定期的に開催し意思疎通を図ると共に、「白手起家」「四海為家」「落地生根」「入郷隋俗」などの華僑華人思想の優れた点なども吸収してきている。

最後に出席された皆さんと活発な質疑応答が行われた。
①中国や香港への店舗設営は直営方式かフランチャイズ形式化か。
②野菜の農薬汚染問題などが報じられたことがあったが、食材調達にあたりどのような安全管理の体制をとっているか。
③味の決め手となる調理用の水はどのように調達しているか。
④パートナー選びのコツは。
⑤店舗内飲食売り上げと、袋物生ラーメンなど持ち帰り品の売り上げの比率は。
⑥上海万博への出店では、来客状況はいかが、又、万博出店の効果はどんなところにあるか。
などの多くの質問が寄せられて、一つ一つ丁寧に答えられ大変好評裏に講演を終了した。終了後も名刺交換・挨拶の希望者の長蛇の列ができ、講師の手持ち名刺が底をついて、うれしい悲鳴をあげられていた。

当日の参加者

世界ブランド「味千拉麺」

講演中の重光悦枝氏

当日の参加者

講演中の重光悦枝氏

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